更新2023.02.14
フルリフォームで間取り変更する際のポイント
「立地や予算が気に入って安い中古住宅を購入したが、現状では住みづらい」「子どもたちが巣立ったので、老後のことを考えてリフォームしたい」など、現在お住いの立地には愛着があるものの、ライフスタイルに変化があったり、住む家族が変わった場合におすすめしたいのが、フルリフォームによる間取り変更です。
フルリフォームでは、住宅内のほぼ全てを新築のように新しくするため、当然部分的なリフォームよりも費用がかかります。しかし、ここで注意したいのが、部分的なリフォームを繰り返すよりも、フルリフォーム1回で済ませたほうが費用が抑えられる場合があります。また、お金をかければかけるだけ、住み心地の良い家になるというわけではないという点です。
適性な予算で住まいの快適さを向上させるためには、ポイントをおさえたフルリフォームを行うことが大切です。
そこで今回は、フルリフォームで間取り変更をする際に知っておきたいメリットやフルリフォームのアイデア、おおよその予算感などを解説していきたいと思います。
基礎部分も見直せる!フルリフォームで間取り変更するメリット
フルリフォームで間取り変更をするメリットは、主に以下の点が挙げられます。
⦁ 住宅の基礎や配管・配線も見直せる
⦁ 新築を買うより安い
⦁ 自分たちに合った間取りを選べる
⦁ 大胆な間取り変更も可能
⦁ 断熱性や防音性といった住宅の基礎性能も向上できる
では、それぞれのメリットについて詳しく見て行きましょう。
1.部分リフォームと違って住宅の基礎や配線・配管周りも見直せる
フルリフォームで間取り変更を行う場合は、住宅の壁や床を一旦剥がしたり配管の位置を変えることもあるため、部分リフォームでは手が出せない住宅の床下や壁の中などもチェックして補強できたり、配管や配線を見直したりすることができます。住宅は、いくら見た目がきれいでも、基礎に問題があると長持ちしませんし、耐震にも不安を抱えてしまいます。そのため、時期を見て修繕やメンテナンスをすることで状態を維持することが大切です。数百万円かけて内装をリフォームした後、数年で基礎の問題が生じてしまっても意味がないので、築年数の古い物件はフルリフォームというチャンスを活かし、基礎や配線・配管周りも見直すことで住まいを長持ちさせるという点にも着目しましょう。
2.新築住宅を建てるよりも費用が安い
フルリフォームはやはりキッチンのみや浴室のみといった部分的なリフォームと比較するとその費用は高額になるといえますが、既存の家を取り壊して建て替えたり、新築住宅を建てたりする場合と比較すると、費用はグッと抑えることが可能です。具体的には、建て替えの場合、木造でも解体工事だけで100万円以上するケースが多いですが、フルリフォームの場合は躯体や既存部分で使用できる個所は活かすことで、費用を抑えつつ新築同様の仕上がりが期待できます。フルリフォームの内容にもよりますが、同じ規模の住宅で新築とフルリフォームを比較した場合、フルリフォームの方が30%程度費用を抑えられるのが一般的です。浮いた費用でクロス(壁紙)をタイルに変更したり、フローリングを無垢にするなど仕上げ材のグレードを上げたり、憧れの家具を購入するなど、資金の使い方にゆとりを持つことが可能になるかもしれません。
3.自分たちの生活に合わせた間取り変更ができる
フルリフォームのメリットとして見逃せないのが、カスタマイズ性の高さです。フルリフォームを検討される方の多くが、中古住宅を購入した際やライフステージの変更時です。中古住宅は以前お住まいの家主に合わせた間取りになっているため、新たなオーナーのライフスタイルに合っていないことが多く、現在はフルリフォームありきで中古物件の購入を検討される方も増えています。立地や土地・建物の大きさを重視して、間取りやインテリアは自分好みにフルリフォームすることで、住む方に合わせた住まいを手にすることができます。また、結婚や出産、お子様の成長の過程で現況のお住まいでは快適に暮らせなくなることも多く、ライフステージが変更になるタイミングで適切な間取りにフルリフォームを行えば、愛着のある住まいを更に快適にすることが可能です。
4.吹き抜けなど大胆な間取り変更も可能
柱や基礎、屋根等の骨組みを残してリフォームをする「スケルトンリフォーム」で行うフルリフォームの場合、構造や建築基準法にかからないリフォームであれば、難しいと言われがちな、開口部や階段の変更も可能です。また、フルリフォームでの間取り変更では、「2階の床を壊して吹き抜けを作る」といった、大規模な間取り変更も構造的に問題が無ければ可能ですので、リフォームの自由度は新築同様に高くなります。部分リフォームでは、他の場所に影響の出る施工ができないため、「リビングだけ」「フローリングの貼り替えだけ」といった限定的なリフォームになりがちです。そのため、大胆な間取り変更を考えているのであれば、部分リフォームではなく住まい全体をリフォームするフルリフォームを検討してみましょう。
5.フルリフォームなら断熱性や耐震性の向上も可能
間取り変更を伴うフルリフォームの場合、床や間仕切り壁をつくり変える際に、断熱性能の向上や耐震補強を行うことも可能です。部分的なリフォームでは行えない住まいの基礎となる部分の向上が図れるため、より快適で安心な住まいに生まれ変わることができます。住宅の断熱性を上げると防音対策にもつながります。中古マンションをはじめとする築年数の古いコンクリート住宅で問題になりがちな結露も断熱対策で抑えることができるため、湿気やカビ対策にもつながります。さらに、間取り変更と共に住宅の機能性を向上することは、光熱費などのランニングコストを抑えることにも繋がります。せっかくフルリフォームを行うなら、長期的に快適な住まいに繋がるリフォームを行いましょう。
フルリフォームを決める前に知っておきたい3つの注意点
メリットの多いフルリフォームですが、もちろん注意点がゼロというわけではありません。 ここでは、フルリフォームの3つの注意点について解説します。
1. 間取りに自由が効かない場合がある
フルリフォームは室内の内装をすべてリフォームするため、今の状態から大きくデザインを変更することができます。壁紙やフローリングなどの床材に天井も真新しくなりますが、既存の住宅がベースになるので、どんな変更でも自由にできるとは限りません。 特に間取りの変更は構造が大きく関係してきます。鉄筋コンクリート造の壁式構造や軽量鉄骨造の鉄骨ユニット造や鉄骨プレハブ造などは間取り変更が行いにくい構造のため、大胆な間取り変更は難しいです。フルリフォームを計画している物件の構造やどのような間取り変更が行いたいのか、その要望はフルリフォームで可能なのかを相談し、確認しておきましょう。
2. 劣化が進んでいると補修工事が必要
新築や建て替えよりコストが抑えられるのがフルリフォームの魅力です。 しかし、躯体の老朽化が進んでいる場合、補修費用・補強費用がかさみ、新築同様、もしくはそれ以上になることもゼロではありません。 もちろん、一部の壁を壊して躯体の状況を確認したり、建物の一部を非破壊検査にかけたりしますが、そこで確認した躯体の状況と建物のすべての躯体が同じであれば問題ありませんが、躯体の半分がシロアリの被害に合っていたり雨漏れの被害にあっているケースなどもあり、確認を行った躯体はたまたま大丈夫だったりその反対などもあるため、躯体は壊してみないとわからないことが多いのです。 そのため、フルリフォームの予算はある程度余裕を持った計画を建てておく必要があります。
3. リフォームローンは金利が高くなることがある
フルリフォームを行うとき、ローンを組む予定の方も多いはずです。 リフォームでローンを組むとき、総額が1,000万円以下の場合は住宅ローンとは異なるリフォームローンというものを組むことになるでしょう。 一般的に住宅ローンの金利が0.5〜2.5%なのに対し、リフォームローンの金利は2.5〜4.5%と高めです。 リフォームローン自体が抵当権を必要としないなど、住宅ローンと比べて制約がゆるいことが高い金利の理由のため、利用するハードルは低いのですが、その分金利が高くなってしまうのです。 リフォームにかかる総額が1,000万円以上の場合は住宅ローンを利用することも可能な場合がありますが、そうでない場合は金利が高くなるということを覚えておきましょう。
失敗しないフルリフォーム業者の選び方
業者選びはフルリフォームが成功するか失敗するかの鍵を握っています。以下の点に気をつけてリフォーム業者を選びましょう。
1.リフォーム業者の施工実績を確認する
信頼してフルリフォームを依頼できる業者かどうかは、その業者の過去の施工実績で見極めることができます。リフォーム業者といっても千差万別で、ローコストなリフォームが得意だったり、デザインに特化していたり、小規模補修が得意や大規模リフォーム専門だったり、その得意ジャンルはさまざまです。フルリフォームを行う際は、フルリフォームが得意な会社を選択することをお勧めします。フルリフォームの施工実績が豊富な業者であれば、そのリフォームに対してどれくらいの費用が発生するのか、考えられる追加工事の内容などもしっかり説明してくれます。 またマンションのフルリフォームを行う場合は、マンションなどの集合住宅での実績がある業者を選びましょう。戸建てでは発生しない管理規約の厳守や管理組合などとのやりとりが発生するため、経験がない業者に任せるとトラブルにつながってしまう可能性があります。 過去の施工実績を確認し、気になるところなどがあればしっかり確認しましょう。曖昧に濁されてしまうようなら、あまりお勧めできません。
2.過去の施工が自分の好みと合っているか
リフォーム業者は施工主の依頼に沿ってリフォームを行ってくれますが、リフォーム業者ごとに特色があり、得意としているテイストにも違いがあります。リフォーム業者の実績や質を見極めることはとても重要ですが、いくらレベルの高いフルリフォームができる業者であっても、好みに合わなければ満足するフルリフォームはできません。 まずは過去の施工例を見て、その施工が好みに合っているかどうかチェックしていきましょう。ご自身のイメージに近いリフォーム例などをいくつか用意し、そのイメージで施工が可能か相談してみるものもお勧めです。
3.こちらのリクエストを汲んでくれるか
施工主の希望通りに全てのリフォームができるわけではありませんが、こちらの希望をできる限り叶えようと努力してくれる業者を選びましょう。リフォームという言葉が持つ意味は幅広く、施工主によって理想とするリフォームは全く違います。会社側の意見はプロ目線のアドバイスで役立つこともありますが、施工主のリクエストを無視して会社の意見を押し付けてくるようなリフォーム業者はいい業者とは言えません。まずはこちらの要望にしっかり耳を傾け、そのうえでできる提案をしてくれる業者を選ぶようにしてください。 また費用が高いものばかり提案してくるのではなく、同じような施工でも価格帯が違う提案をいくつかくれるような業者は信頼できます。その際にメリットだけでなく、それぞれのデメリットもきちんと話してくれる業者だとより安心です。
4.見積もりの内容をきちんと説明してくれるか
業者とフルリフォームの正式契約をする前に、まず見積もりをとって検討する必要があります。このとき見積書を渡されますが、見慣れていない見積書を見ると不明な点がいくつか出てくるはずです。わからない内容を説明したときに、こちらがわかりやすいようきちんと説明してくれる業者かどうかも見極めましょう。見積書に記載されている項目は、専門用語が多く、なかなか理解できないものも多いです。質問しているにもかかわらず、難しい言葉で返してくるような業者はあまり信頼できません。また聞いている質問の意図とは全く違う回答をする業者も不安が残ります。 それから見積書にはどんな契約が含まれているか、口頭できちんと説明してくれる業者が好ましいです。追加料金が発生する可能性やその条件について、こちらから聞かなくてもきちんと説明してくれる業者は誠実な業者と言えるでしょう。
5.担当者との相性
フルリフォームは契約して実際に工事が完了するまで数か月の期間がかかります。あまり長くないと感じるかもしれませんが、住宅は住んでからもメンテナンスなど、担当者とは末永く付き合っていくことになります。肝心の担当者との相性が悪ければ、ずっとストレスを感じてしまうことになりかねません。 フルリフォームは施工側の要望も多く、プライベートな内容も多く含まれるため「話しやすいな」と思える相手でなければ、打ち合わせもスムーズに進みません。こればかりは担当者と施工主の相性です。最初の相談の段階から相手との会話に好印象を抱いているかという感覚を大切にしてください。 相性の良さを重視しながら、連絡がスムーズに取れているか、期日などは守ってくれるかどうかも契約の段階までに見極めるようにしてください。
6.保証やアフターサービスの内容も確認する
業者ごとにさまざまな保証やアフターサービスを用意しています。工事中やリフォーム後に何かしら合ったときにも安心ですから、その内容が充実しているかも確認しておきましょう。特にリフォームの場合は新築を担当した施工会社とリフォームを行った会社で責任の所在があいまいになりがちです。施工した業者以外のチェックを受けられるリフォーム瑕疵保険に加入している業者かどうかも確認しておくとより安心です。
フルリフォームの間取り変更でできる具体例
一般社団法人住宅リフォーム推進協議会のガイドブックによれば、具体的なリフォーム事例は以下の通りです。[注1]
⦁ 動線の整備
⦁ 収納の増設
⦁ LDKの拡張
⦁ 書斎や趣味の部屋作り
⦁ 二世帯住宅化
⦁ キッチンや水回り
[注1]一般社団法人 住宅リフォーム推進協議会:住宅リフォームガイドブック
それでは、それぞれについて詳しく解説していきましょう。
動線を整備して家事を効率化する
現在の住まいの問題点として挙がりやすいことのひとつに「家事動線」があります。キッチンまわりやランドリー周辺の家事動線が整っていないと、家中を駆け回ることになりがちです。
例えば、買い出しから帰って来ても玄関からキッチンが離れていると、重い荷物を持って家の中を移動しなければならず、適正な動線になっているとは言えません。今はネット通販でまとめてお水や食品を購入する方も多いと思いますが、その際も玄関で受け取った荷物を遠くのキッチンまで運ばなければならないとなると負担になります。また、洗濯機置き場から洗濯物を干す場所までの距離などについても同じことが言えます。キッチンの広さなどに不満はなくても、家事動線に不満がある家というのは案外多いものです。家事動線に配慮した設計をもとにフルリフォームを行えば、日常生活における家事の手間や時間、労力などの軽減が期待できるでしょう。
欲しい場所に収納を増設する
フルリフォームで間取り変更を行う場合は、収納の増設や見直しを行うこともおすすめです。
例えば、アウトドアやスポーツが趣味なら、玄関横の居室と玄関を繋げることで広い玄関収納を設けるというのも良いでしょう。キャンプ用品や自転車、ゴルフクラブにスキーやサーフボードなど、重量がありかさばる荷物を収納できるだけでなく、汚れがちなアウトドア用品や、スポーツ用品を家の中に持ち込まずに済みます。また、玄関に近いため、準備や片付けもスムーズに行えます。
収納は住む人のライフスタイルによって適切な場所が異なります。居室それぞれに収納を設けたい方もいれば、家族の衣類はまとめた衣裳部屋に収納したい方もいらっしゃいます。下着ひとつ取っても、脱衣所に収納されている方が便利という家庭もあれば、他の衣類と一緒に各居室に収納しておきたいという家庭もあります。折角広々とした収納スペースを設けても、使い勝手が悪ければ意味がありません。まずはどんなライフスタイルで、どこに収納があると快適に暮らせるのかを見極めることが大切です。その際には、設計士や整理収納アドバイザー、インテリアコーディネーターなどプロの意見も参考にすると、より良い収納計画が行えるでしょう。
また、近年では「断捨離」や「ミニマリスト」ブームもあり、ネットや雑誌などでもモノの持ち方、選び方や、収納についての情報やアイデアが多く発信されていますので、リフォームを期に「モノと自分との関係」についても見直してみると良いかもしれません。
キッチンをつなげてLDKを広くする
古い住宅の場合、キッチンやダイニングとリビングが分かれている間取りが多いですが、現在の主流は家族が同じ空間で過ごせるリビング・ダイニング・キッチンをつなげたLDKの間取です。独立キッチンをリビングとつなげると空間が広くなり、開放感を得られます。また、独立キッチンの場合、調理中は奥様が孤立しがちですが、LDKはリビングでくつろぐ家族とコミュニケーションを図りながら調理を進められるため、人気の高い間取りになっています。LDKが広くなれば、子どもが遊ぶスペースを確保できたり、大きなテレビやソファを置くこともでき、リビングを充実したスペースにすることができます。ゲストにキッチンを見せたくない場合は、間仕切り戸やパーテーションで空間を仕切り、目隠しすることも可能です。
子ども部屋を趣味部屋・ゲストルーム・書斎に
お子さんが独立し、自宅から巣立った場合、使わない子ども部屋は趣味の部屋やゲストルームに間取り変更するのもおすすめです。ダンスやゴルフが趣味なら鏡張りのダンススタジオ風や人工芝を敷き、シュミレーションゴルフを導入したゴルフルームや自宅でワークアウトができるホームジムなども、近年人気が高い間取りです。健康寿命が注目され、元気に年を重ねるためには適度な運動が欠かせません。また、手芸やジオラマなど手先の細かな作業を必要とする趣味の場合、個室があると集中して行えます。また、子供部屋をゲストルームにすることもおすすめです。お子様が新しい家族をつくり、帰省された際に過ごすゲストルームが快適なら帰省する機会も増えますし、知人や友人が訪れた際も気兼ねなく過ごすことができます。
加えて、昨今では働き方改革や新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、オフィスには通勤せず自宅にてテレワークを行う方も大幅に増えています。住宅購入当初は「仕事がある日は残業で帰りも遅いし、書斎なんて必要ない」と考えていたものの、急遽テレワークが導入され「広くなくても良いから仕事用の個室が欲しい」と考えるようになった方も少なくないのではないでしょうか。部屋を増やすと考えると大がかりなイメージもありますが、リビングの隅に壁を作って小さな空間を作ったり、押入れやクローゼットがあった部分を部屋の一部として利用することも可能です。
単世帯向けの物件を二世帯住宅にする
お子様との同居や高齢の親との同居を行うリフォームなら、単世帯を二世帯住宅にリフォームすることで、同居する親世帯・子世帯それぞれが快適に過ごすことも可能です。
なお、二世帯住宅には主に「完全同居型」「部分共有型」「完全分離型」という3つのタイプがあります。それぞれにメリット・デメリットがあり、自分たちのライフスタイルにあった二世帯住宅のタイプを選ぶことが重要になりますので、事前に家族間でよく話し合うことをおすすめします。
特に、完全同居型なら場合によっては部分リフォームでも可能かもしれませんが、単世帯住宅を二世帯住宅にする場合は住まい全体を見直せるフルリフォームが最適です。高齢の親との同居の場合はバリアフリー工事を行ったり、介護を見越して両親の居住スペースを階段の上り下りが不要な1階にまとめたりする必要があります。こういった工事は部分リフォームでは到底対応できないので、二世帯住宅化はフルリフォームならではのプランだと考えておいたほうが良いでしょう。
キッチンや水回りの移動
古い住宅の場合、キッチンがリビングとは別の場所にあったり、流し台やコンロ、作業台などが壁側に設置してあることは決して珍しくありません。そのような壁付きキッチンを対面式に変更して、LDKの間取にしたい場合や、浴室の位置を変更したいなど、水回りの間取変更を行う際は部分リフォームでは難しい場合があります。
その理由としては、水回りは給排水や換気を伴うため、単純に場所を変更するだけではなく、配管の勾配やダクトの配管に配慮する必要があるからです。排水などは床下に配管されているため、それを変えるとなると床を剥がずなどの大がかりな工事が必要となり、部分的なリフォームが難しくなります。もちろん、既存と同じ位置にキッチンを入れ替えるのであれば部分リフォームでも可能ですが、水回りの間取変更を行いたい場合は、フルリフォームをおすすめします。
フルリフォームで間取り変更する際の注意点
フルリフォームで間取り変更をする際は、主に以下のような点に注意しましょう。
⦁ フルリフォームでもプランによっては実現できない
⦁ リフォーム中は仮住まいが必要
⦁ リフォーム会社次第で仕上がりが変わる
仮住まいの必要性についてはある程度は想定できても、プランによっては実現できない点や、会社次第で仕上がりが変わるという点は不安に思う方も多いのではないでしょうか。それではそれぞれについて詳しく解説していきましょう。
フルリフォームであってもプランによっては実現できない
フルリフォームは、非常に自由度の高いリフォーム工事ですが、既存の基礎や柱等の躯体を利用するため、構造上どうしても対応できないリフォームプランもあります。集合住宅の場合、事前に管理組合などの承諾を得なければいけない場合もありますし、構造上取り除けない壁や柱なども存在します。また、増築を考えている場合、建ぺい率や容積率の関係で建築許可が下りないこともあるので、大規模リフォームの際は「この物件でこのプランは実現できるのか」をリフォーム会社に確認しながらプランづくりを進めましょう。また、リフォーム会社によってプランに違いがあります。不可能と言われたリフォームが別の会社では可能な場合もあるので、行いたいリフォームの事例を多く手掛けているリフォーム会社数社にプランを依頼して、比較検討を行うと良いでしょう。
リフォーム中は仮住まいが必要
フルリフォームの工事では、基本的に数ヶ月の工期が必要です。当然、その間は生活できないため、仮住まいが必要になります。家具家電付きで敷金や礼金が不要なマンスリータイプの賃貸住宅など、仮住まい専門の賃貸不動産などもあるので、インターネットで調べてみたり、不動産会社に相談してみると良いでしょう。また、荷物などが仮住まい先に入らない場合はレンタル倉庫を借りるなど、リフォーム代金とは別の費用が必要になります。仮住まい先が見つからず工事に取り掛れなかったり、工期延長となると費用がかさみますので、必要最低限の時間と費用でリフォームした住まいへ住み替えられるように、リフォームプランの作成と平行して仮住まいの準備もしておきましょう。
リフォーム会社次第で仕上がりが変わる
リフォーム会社と一口に言っても、各会社によって建築やリフォームの技術、設計力には大きな差があります。
例えば、相場より工費が安くても、クロスの貼り方が雑だったり、2~3年後にクロスが剥がれてきてしまった!などトラブルもあります。工事が進んでから施工レベルの低さが分かっても後の祭りです。一方、工費が安くても、社内独自の仕入れ方法や教育システムにより仕上がりに全く問題がない場合もあり「安かろう悪かろう」とも一概にはいえません。ただ、間取り変更を含むフルリフォームは基本的に大規模なリフォームとなりますので、パートナー選びは慎重に行いましょう。
その際に下記の3点に注目してみてください。
⦁ 紹介やリピート客の多さ
⦁建設業許可の区分
⦁ 専用のアフターメンテナンス窓口
顧客に紹介やリピート客が多い会社は信頼度が高いと言えます。リフォーム会社に不満がある場合、知人を紹介したりしませんし、同じ会社でリフォームしたいとも思わないはずです。そのため、紹介による仕事やリピーターは多いのか、それとも新規の客が多いのかについては、それとなく営業マンに確認してみましょう。
また、建設会社(リフォーム会社)は、一定の要件を備えた上で建設業の許可を受けなければいけません。その許可の際に与えられるのが建設業許可番号です。一般建設業と特定建設業があり、特定建設業の方が取得は難しくなります。アフターメンテナンスはリフォーム会社の規模によって、担当営業マンが窓口になっていることも多いですが、担当者が退職してしまうと、どこに問い合わせて良いか分からない、きちんと伝達されないなどが問題になるケースもあります。専用のアフターメンテナンス窓口があるかなども、信頼できるリフォーム会社の指標になると思います。
フルリフォームにおける間取り変更の失敗を避けるコツ
フルリフォームによる間取り変更の失敗を避けるコツは、以下の3点です。
⦁ 住まいに感じている不満を解消する
⦁ 予算に余裕を持たせる
⦁ 相見積もりを取る
それではこちらもまた、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
現在の住まいに感じている不満を解消する
フルリフォームは自由度が高い分、現状特に不満がなかった部分でも「理想」に近づけようと要望が増えがちです。 もちろん、予算が青空天井という方は何ら問題ありませんが、多くの方は「だいたいこれくらいまでの金額に抑えたい」という予算があるのではないでしょうか。予算内でフルリフォームによる間取り変更を行いたい場合は、まずは「理想の住まい」を思い描くのではなく、「現在感じている不満」の解消を第一に考えることが大切です。
例えば、「家が寒い」という不満がある場合は、断熱材を変更したり、内窓をつけるなどのリフォームが必要になるはずです。しかし、断熱材などは表面には見えないため、いざリフォームについての打ち合わせを始めると仕上げ材などの仕様の方に目が行きがちになることも…。また、住み慣れた自宅でも廊下をリビングに取り込んだり、適切な位置に収納を設けるだけでも、住み心地は大きく向上します。フルリフォームだからといって、すべて新しい設備や最新機器にする必要はありません。予算内で最大のパフォーマンスができるプランを模索しましょう。すべてに予算を掛けるのではなく、見せ場となる部分に費用をかけ、他は堅実に生活の質向上に役立つプランを考えることが賢明です。
予算に余裕を持たせる
フルリフォームをする場合、用意できる予算を契約時に全額をつぎ込むのはおすすめできません。リフォームでは壁の内側や床下など壊してみないと分からない点があり、設計図とは異なる仕様になっているケースも中にはあります。築年数が新しいので躯体の補強などは予算に入れていなかったのに、いざ壁を壊してみたら雨漏れにより躯体が弱り、補強が必要になるなど思わぬ費用がかさんでしまうこともゼロではありません。もしもの際に備え、予算には余裕をもった計画を立てておきましょう。
また、実施にリフォーム会社と打ち合わせをする中で建材や設備についての詳しい話を聞いたり、ショールームに足を運んだ際にワンランク上の設備などを目の前にすると「せっかくのリフォームだから」と、少しずつランクが高いものを選択してしまいがちです。気づけば大幅に予算をオーバーしていた!ということにもなりかねません。「予算が足りなかったせいで2番手、3番手のものを選んだ」という意識があると、物足りなさを感じたり、残念な気持ちになってしまったりする方もいるでしょう。心理面でのモヤモヤを生み出さないためにも、やはり予算には余裕を持たせておきたいところです。
相見積もりを取る
はじめてリフォームを行うなら数社にプランを依頼し、プランと見積を比較検討することをおすすめします。同じ住宅のリフォームで、プランが大きく異ならない場合、費用に大きな差が出ることは通常考えられません。もし、1社だけ極端に安い場合は注意が必要です。リフォームにおいては、簡単に買い替えられる生活用品とは異なる基準で吟味することが大切です。住いは長年住み続ける場所でもあり、地震や台風などから家族を守る大切な場所でもあります。極端に安い場合は安いなりの理由があると考えましょう。そして、プランに違いがある場合は、その差が対価に見あう価値があるのか検討しましょう。
間取り変更を伴うファミリータイプのフルリフォーム予算は1000万円~
ファミリータイプの住宅で行うフルリフォームの間取り変更費用は、予算1000万円~と見ておきましょう。もちろん規模や内容によって1000万円以下の場合もあると思いますが、リフォームの費用はある程度余裕を見た方が良いので、敢えて1000万円~としました。また、キッチンやバスタブ、洗面台やトイレなどを新しいものに替える場合、その費用だけでも数百万円はかかります。その他に、フローリングやタイルにクロスなどの仕上げ材、照明機器、リフォーム工事費用などが掛かるとなると、1000万円を超えるケースが多くなるのも納得できると思います。また、水回りの間取り変更は、配管を移設したり重量に耐えられるように基礎を補強したりする必要があり、リフォーム費用もかさみます。一からつくる新築は想定外のケースが起こることはあまりありませんが、躯体など既存を活かすリフォームは躯体の状況など見てみないと分からないこともあるため、余裕を持った予算を設定しておく必要があります。
知らなきゃ損!?リフォームに関する補助金や優遇制度
先にご紹介したとおり、リフォームをする場合はある程度余裕を持った予算設定をしておくことが好ましいです。また、リフォームをする際に国や地方自治体から補助金や優遇制度を受けられる可能性があることはご存知でしょうか。
ただし、どんなリフォームにでもそのような補助金や優遇制度が受けられるというわけではなく、対象となるのは主に「介護」「省エネ」「耐震」を目的としたリフォームとなります。
例えば、介護保険制度を利用した補助金の場合
⦁ 40歳以上の介護保険の被保険者で、要介護認定において「要支援1~2」または「要介護1~5」の認定を受けていること
⦁ 被保険者が病院に入院していたり福祉施設などに入所していないこと
⦁ 対象となる住宅が「介護保険被保険者証」に記載されている住所であること
以上の3つが支給の条件となり、所得に応じて最大18万円まで補助金を受けることができます。(2020年現在)もちろん、介護保険制度を利用するわけですから、支給を受けるためには手すりの取り付けや段差の解消など、介護を目的としたリフォームが前提ですが、もしリフォームをする際に、このような設備の設置工事を考えているのであれば、自分や同居する家族が対象となるかを確認しておくと良いでしょう。
この他にも、自治体が独自に行っている介護リフォームにや耐震補強に関する助成金、国が行っている省エネ回収の補助金制度など様々なものがありますので、リフォームを検討する場合は、まずは何か対象となる制度がないか事前にチェックしておくことをおすすめします。
【まとめ】やっぱり間取り変更をしたいならフルリフォーム!
リフォームの要望で「間取り変更」を行うのであれば、住まい全体をリフォームするフルリフォームがおすすめです。間取り変更を伴う場合は、当然ながら一定範囲でのリフォームが必要になります。その場合リフォームしている部分とリフォームしていない部分の差が鮮明になるため、リフォームされていない部分がより目立ってしまう結果になり兼ねません。また、フルリフォームは住み手が変わったり、長期間住んだことで年齢や好みが変わり、現居が住みにくいと感じる際に、年齢や家族構成、好みに合わせた住まいを手に入れることが可能です。ただし、フルリフォームは自由度が高いので、当初必要としていたリフォームとは異なる要望が追加され費用が高くなってしまったり、安さを重視した結果、質の良くないリフォーム会社に工事を頼んで後悔するケースもあります。工事が終わってから失敗を取り返すのは難しいため、フルリフォームで間取り変更をする場合は、プランや見積を比較しつつ、信頼できるリフォーム会社で住まいに感じている不満を解消できるリフォームプランを見つけましょう。