更新2023.02.14
患者様に支持されるクリニックを医院リフォームで
患者さんにとってクリニックは単に診察や治療を受けるための場所ではありません。体の不調から感じる不安を解消し、安心感を得る癒しの要素が必要です。そのようなクリニックになるには基本的な機能を備えるだけでなく、待合室や診察室の内装デザインも意識することが大切です。
フルリフォームで快適な環境を実施するなら受付から会計までの動線や流れ、待合室での待ち時間なども含め、患者さんが快適に利用できるようにしましょう。ただし、診療科によっても配慮すべき内容は異なります。この記事では、クリニックのフルリフォームをする際に押さえておきたい重要なポイントを解説します。診療科別のポイントやフルリフォームの注意点にも触れていますので、ぜひ参考にしてください。
医院リフォームで重要な3つのポイント
医院リフォームやクリニックのフルリフォームでは機能性、デザイン、工事費の3つのポイントを意識する必要があります。ここでは各ポイントについてくわしく解説します。なお診療科目ごとに意識したい点は、後述するのでそちらも参考にしてください。
1.機能性について
クリニックは診療を行う場所であり高い機能性も備える必要があります。ここでは、具体的な機能性とともに動線やレイアウトに関してお話したいと思います。
・清潔感
クリニックで重視すべきなのは清潔感です。診察室だけでなく待合室やトイレなどクリニック内のすべての場所で、清潔感を意識しましょう。どんなに内装やインテリアが素敵なクリニックでも、ほこりや手垢がついているような医院には通いたくないですよね。そのため、清掃が行いやすい機能や環境づくりが大切です。患者さんが触れるドアやスイッチ類はセンサーで自動開閉や自動点灯できる非接触型が良いでしょう。また、使用する素材も、ガラスならすりガラスやステンレスなら表面に凹凸をつけたエンボス加工を施すと、手垢などの汚れが目立ちにくくなります。床や壁には抗菌コートを施すなど、目には見えにくい部分に対しても配慮する必要があります。
・患者さんにとって快適なレイアウト
クリニックや医院に来院される患者さんは、体調に不安を抱えている人がほとんどです。中には通院していることを周囲の方に知られたくないと思う方もいらっしゃいます。患者さんのプライバシーに配慮するため、診療室の入り口と出口をわけ、患者さん同士が鉢合わせにならない動線にしたり、診察室や処置室を個室にするクリニックが増えています。単に部屋を区切るだけでなく、話し声が他の人に聞こえないような配置にすることも重要です。また、待合室や診療室から働くスタッフの動きを見せず、患者さんとスタッフの動線は分けるのが理想的です。
クリニックにはさまざまな患者さんが来院するため、どのような人でも使いやすいバリアフリー対応の環境を作りましょう。お体が不自由な方や高齢の方、小さなお子様をお連れの方や妊婦さんは多機能トイレなどあると、安心して通いやすい環境になると思います。
・スタッフが動きやすい動線
クリニックの業務を円滑に進めるためには、スタッフが動きやすいレイアウト作りも重要です。診察室や処置室をすぐに往来できるようにし、移動に関するストレスが生じないように配慮する必要があります。働きやすい動線を意識すれば医師、看護師、その他のスタッフがより連携しやすくなります。
また、人と人がスムーズにすれ違えるかどうかも大切なポイントです。車椅子や担架などに患者さんを乗せているときでも移動しやすいように廊下の幅は広めに確保しておきましょう。すでに触れたとおり、スタッフがなるべく待合室の近くを通らずに移動できるようにすることも大切です。そのためには診察室の中を通って他の部屋や通路に出られるようにしなければなりません。
2.デザインについて
クリニックのデザインでも清潔感や安心感が重要です。それぞれについてどのようなことを意識したらいいか解説します。
・清潔感
ここでは、清潔感のあるデザインに関してお話したいと思います。
清潔感のあるデザインの王道はやはり白を基調としたデザインです。相性がよい素材だとガラスなどです。白でも色味を変えることで印象が異なります。青みかがった白は透明感を演出しやすく、アイボリーなど黄みがかった色はやわらかな印象になります。
また、白は他の色との組み合わせも長けているので、メインカラーを引き立てるサブカラーとしても最適です。
・安心感
クリニックの内装は患者さんが安心できる雰囲気にすることも忘れてはいけません。患者さんがクリニックを訪れる理由は、何かしらの不調を抱えているからです。少なからず不安を抱えてクリニックを訪れるため、少しでも不安を和らげて安心できるデザインを取り入れましょう。安心感を与える素材として適しているのは、木のぬくもりが感じられるものです。
例えば、ナチュラルな木目と明るい色彩のアイボリーなどを基調としたイメージにすると、明るく軽やかな安心感を得られます。同じ木の素材でもダークブラウンなどを使用すると、落ち着いた雰囲気を得られます。医院のイメージによって木材のカラーを使い分けると良いでしょう。
3.施工・工事について
クリニックリフォームは住宅よりも安価でできる場合が多いですが、実際の工事にかかる費用は具体的なリフォームの内容や建物の広さによっても大きく変化する可能性があります。特にクリニックでは機器を支えるために、荷重に耐えられるよう床の補強工事をする場合や、高電圧の配線工事や幹線工事が必要な場合もあります。特別な工事をすると費用が高くなりやすいため、優先順位を決めながらリフォームの内容を決定しましょう。なるべく費用を抑えてリフォームするためには設計と施工の両方を同じ業者に依頼するのがおすすめです。ただし最初から1社に絞って相談するのではなく、複数社から話を聞いたうえで見積もりを出してもらいましょう。料金を比較し、満足できそうな業者を選ぶ必要があります。
もちろん、費用も重要なポイントではありますが、内容や対応も考慮したうえで安心して任せられる業者を選ぶことが特に大切です。細かい部分まで相談しながら信頼できる業者に依頼しましょう。
診療科別の気をつけたいポイント
それぞれの診療科によって内装で気をつけたいポイントは異なっています。リフォームを考えるうえでは診療科ごとの特徴もしっかり把握しておかなければなりません。ここでは診療科別に気をつけたいポイントについて、実際の事例を交えて解説します。
内科
内科は他の診療科に比べても来院者数が多めです。なるべく待合室を広めにして混雑時でも患者さんが待機しやすい環境を整えましょう。
インフルエンザなどウイルス感染の疑いがある患者さんの診療のために隔離できるスペースを設けて待合室を分けられるようにするとより安全です。換気システムで空気の流れも調整できるようにしましょう。 また、健康診断などの対応も行うか否かで、クリニックのレイアウトも変わってきますので、どのような医院を想定しているのか、事前にしっかりと検討しておく必要があります。
当社で手掛けた内科のリフォーム事例は、ご自宅を医院にリフォームした事例です。
1階を奥様の皮膚科。2階をご主人の内科とし、1階から階段でもエレベーターでもアクセスできるバリアフリー対応を行いました。
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皮膚科
基本的なレイアウトは内科と同じですが、皮膚科の場合、美容皮膚科を行うかなどによってレイアウトや内装も変わってきます。一般皮膚科のみなのか、一部美容皮膚科を取り入れるのか、美容皮膚科専門とするのか。美容皮膚科はレーザーなどの機器を多く扱い、治療を行う個室も一般皮膚科に比べ多く必要になります。メイクを落としたり、施術が終わられた患者さんがメイクアップできる化粧台なども必要になります。
当社手掛けた一般皮膚科のリフォーム事例は、古くなった医院をビタミンカラーのイエローをポイントに艶のある大理石やガラスに水が伝うウォータースクリーンを用いて、以前の印象から大胆にイメージを変更しました。長年の動線が身についているとのご要望を受け、以前の配置は大きく変更せずに、使い勝手を向上しています。
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耳鼻咽喉科
耳鼻咽喉科は継続的に何度も通っている患者さんが多いため、待ち時間を短くするための工夫が必要です。たとえば、予約システムを導入すると待合室の混雑を回避しやすくなります。ただし花粉症の時期などはどうしても患者さんが増えるため、待合室はなるべく広めにしておきましょう。
また、内科同様に耳鼻咽喉科にもインフルエンザの患者さんも多く訪れます。インフルエンザが流行する時期に備えて、内科のような隔離スペースや換気システムも設置しておくと安心です。また、ネブライザーを複数台設置しておけば複数の患者さんの治療を同時並行で行えます。
• 当社で手掛けた耳鼻咽喉科のリフォームは院長から子供の泣き声に困っているので、子供に恐怖感を与えない医院の希望を受け、絵本の世界観を表現したクリニックを提案させて頂きました。大人も子供も楽しめる医院にリフォームとなっています。
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美容整形外科
治療を目的としたクリニックとは異なり、「きれいになりたい」「痩せたい」「若返りたい」など美容やコンプレックスの解消が目的のため、医院の内装も通常のクリニックとは異なる目的でつくられることが多いです。一般的な医院リフォームでは清潔感や安心感、万人に受けるデザインが優先されますが、美容外科のクリニックにはデザイン性や高級感なども重視されます。
当社で手掛けた美容整形外科のリフォーム事例も、カラーは万人受けするモノトーンですが、高級ブランドのアパレルショップのような内装で、一見するとクリニックとはおもえない佇まいとなっています。
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眼科
眼科では検査に使用する機器が多いため、診察やその前後の検査をスムーズに進められるような内装のレイアウトを意識しましょう。検査を待っている人の待ち時間が長くならないよう、検査室は2~3人が同時に検査を受けられる程度の広さを確保する必要があります。
視覚障害がある人や高齢者もクリニックを訪れるため、内装のバリアフリー化も忘れてはいけません。なるべく段差を設けなくて済むようなレイアウトにしましょう。トイレや検査室の場所がすぐにわかるよう表示やサインを工夫することも大切です。
手術にも対応するなら手術室やリカバリールームも必要になります。1日に対応する手術の数を考慮して手術室やリカバリールームの数を決めましょう。
当社で手掛けた眼科のリフォーム事例では、優しい色彩と曲線を描くやわらかな印象が特徴のクリニックです。広々とした検査スペースにリラックスできるリカバリールームなど、医院の動線やレイアウトにも配慮しています。
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産婦人科
プライバシーに配慮するため診察室や内診室は個室が基本です。また不妊治療を受け付けている患者さんと、お産の人とで可能であれば待合室を分けましょう。完全に分けるのが難しくてもゾーニングできる配慮が必要です。
また、出産できる施設を備えるか否かによっても、クリニックの仕様は変わってきます。
出産にも対応するのであれば、新生児室や入院できる施設が必要ですので、医院の規模も大きくなります。なお、病室はいかにも病院らしい雰囲気よりも、最近は高級感のあるホテルのような部屋のほうが好まれます。また、産科には見舞客も多く訪れるため患者さんとは別の動線を設けましょう。具体的には患者さんが待機している待合室の近くを見舞客が通らずに病室へ行けるようにする必要があります。
当社が手掛けた婦人科は待合室から壁面緑化が臨める癒しのクリニックとしました。周辺を高い建物に囲まれた都心部にあるビルのクリニックですが、窓の外に広がる美しい緑を眺められるリラックス効果の高いクリニックとしました。
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歯科
歯科は予約制となっているところも多いため待合室はそれほど混雑しませんが、診察台が複数ある場合は、お会計が重なることもあるので、余裕を持った待合室の方が安心です。また、診察台は個室や半個室にできると患者さんのプライバシーもしっかり守られます。隣の人を気にしなくて済むため患者さんはリラックスして治療に臨めます。レントゲン室や消毒コーナーをクリニックの中心に設置できれば、スタッフだけでなく患者さんにとっても移動が少なく使いやすいです。一方、患者さんが入らない技工室などは診察の動線から外れた場所に設置しても問題ありません。
歯科によってコンセプトはさまざまであり、予防やケアを重視するところもあれば、手術まで行う専門歯科もあります。なかには見た目の美しさに重点を置く審美歯科もあるので、それぞれの事情にあわせて必要な設備を導入しましょう。
当社で手掛けた歯科医院のクリニックは格子とすりガラスを用いたパーティションがそれぞれの診察台をゾーニング。圧迫感を払拭しつつプライバシーが守られた空間を叶えています。
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【まとめ】
クリニックのフルリフォームを実施する際は、デザイン、機能性、工事費の3つのポイントを意識しましょう。特にデザインは患者さんがクリニックに対して抱く印象を決定づける重要な要素となります。患者さんが安心して快適に過ごせるようにするため、診療科ごとの特徴にあわせたデザインを取り入れましょう。また患者さんとスタッフの両方がスムーズに利用できるよう、レイアウトや動線にも配慮する必要があります。
工事費には目安もありますが実際のリフォームの内容によっては費用が高額になる可能性もあります。金融機関から融資を受けたりリースを活用したりする方法もあるので、工夫しながらリフォームを実施しましょう。